| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


シンポジウム S11-3

ジャワマングースの根絶計画について

山田文雄(森林総研関西支所)・阿部慎太郎(環境省)

ジャワマングースは1910年に沖縄本島に導入され, 1979年頃に奄美大島に導入された.一方,鹿児島市においても20〜30年ほど前から定着していることが昨年(2009年)判明した.外来生物法(2005年施行)で特定外来生物に指定された本種の根絶計画は,2005年から沖縄島北部地域と奄美大島で開始された.計画目標として,在来種や生態系保護を目的に2014年までの10年間に生息地からの完全排除(根絶)を掲げている.奄美大島の例では,雇用従事者(マングースバスターズ)37名,探索犬3頭,捕殺トラップと生捕トラップ(希少種生息地で使用)で年間最大190万ワナ日が実施されている(2008年度実績).1993年の有害捕獲開始からの総捕獲数は3万頭,またこの5年間(2005-2009年)では7,400頭に達した.近年,分布の北部で捕獲成果の見られない地域がでてくるなど,分布縮小させていると考える.今後は,低密度で生残する個体の除去のため,高い捕獲圧(200万ワナ日)を効果的に配分し,生息数の低減化,分布域の縮小,地域的根絶の実現を目標としている.このため,探索犬,毒餌やモニタリング技術開発,数理生態学的手法による根絶予測などの利用を進めている.この5年間で,防除戦略と集約的な捕獲作業が展開されてきたと評価できる.しかし,今後の目標達成を図るためには,一層の技術発展と綿密な作業が求められる.技術開発では,在来種の混獲を防ぐ方法,薬物の使用,発見感度の向上,発見後の捕獲方法や,捕獲とモニタリングの努力量配分の最適化などが必要である.ハブ対策として不用意に導入された本種であるが,この事例からも,外来種対策は根絶に多大の努力を要するため,導入阻止や早期対策の必要なことを示している.


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