| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T02-7

今後の竹林拡大研究における課題と方向性

河合洋人(岐阜大・流域圏セ)

今後,竹林拡大に関する研究の課題として,いくつか挙げられるが,最も大きな課題は地下部に関する研究だと思われる。現在,地下部に関する研究はあまり多くないが,地下部はタケ類の生態や竹林拡大を理解する上で重要である。また,地球温暖化対策のため,二酸化炭素吸収源としての竹林の評価が行なわれているが,やはり地下部に関するデータ蓄積の少なさが指摘されている。従って,地下部の成長や現存量の把握など,地下部に関する研究が今後必要になると思われる。さらに,データの蓄積という点では竹林拡大研究の研究数自体が多いとはいえない。特に近畿地方から以東の地域における研究事例が少ないため,さらなるデータの蓄積が必要となるであろう。一方,植生遷移から見た場合の竹林の推移に関しても興味深い課題であろう。従来は植生遷移の過程では,途中相に位置づけられていた。しかし,原生竹林の更新とその生態学的研究(上田・沼田,1961)は地形条件によっては極相に近い状態(地形的極相)が維持される可能性を指摘した。この点は長期的なモニタリングやリモートセンシングによる過去の竹林動態の推移などから解明する必要がある。さらに,今回講演して頂いた,竹林の物質循環に関する研究も,竹林拡大のメリットやデメリット,竹林の生態系における役割を評価するといった点で重要であろう。このような課題以外にも,今回の企画集会で講演していただいたその他のテーマや,参加者による意見なども踏まえて,今後の竹林拡大研究をどのように進めていくべきか,議論を深めていきたい。


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