| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T05-3

三宅島火山噴火と土壌微生物生態系の応答

太田寛行(茨城大・農)

生態系のエネルギー・フローと炭素-水素-酸素の循環はリンクする。その実体は光合成系と酸素呼吸系の共役である。三宅島2000年噴火とその後の火山ガス噴出は、光合成系(植物)を無くした環境を生み出した。残っているのは呼吸系(土壌微生物)であり、その群集構造と機能にどのような変化が生じたかを、本発表では突きつめ、議論を行いたい。分析試料は、雄山山頂近くで採取した火山灰堆積物(採取, 2003年〜;pH 3.0-3.7; TC, <0.01-0.03; TN, <0.01-0.01)である。2003年採取試料の培養可能菌数(g-1)はすでに105オーダーであり、翌年以降の採取試料では106のレベルが維持された。この細菌密度は通常土壌の約1/100であるが、CO2吸収活性、ニトロゲナーゼ活性、鉄酸化活性は、噴火の影響を受けなかった島内土壌よりも十分に高かった。試料から直接DNAを抽出して行った遺伝子ライブラリー解析{16SリボソームRNA遺伝子、RubisCO遺伝子 (rbcL)、ニトロゲナーゼ還元酵素遺伝子 (nifH)}の結果は、鉄酸化細菌、Acidithiobacillus ferrooxidansLeptospirillum ferrooxidansが主要な細菌であることを示唆した。さらに、15N2ガスを用いたstable isotope probingによっても両細菌グループの窒素固定能が示された。以上の結果より、火山灰堆積物の微生物生態系では、鉄酸化のエネルギー生成系から始まり、CO2固定とN2固定代謝が連動していることが推察された。


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