| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T08-4

土壌微生物群集と樹木群集の相互作用:レビューと実証

*潮雅之(京都大・生態研セ), 北山兼弘(京都大・農)

陸域生態系において、土壌微生物群集は細胞外酵素を分泌することで有機物の無機化過程を担い、植物の生育に必須な無機態栄養塩の供給に寄与している。細胞外酵素の活性は、酵素の分泌を担う微生物群集の組成や、植物リターの質、土壌温度、湿度、pHなどの外部要因によって直接的、間接的に制御されている。従って、土壌において微生物群集は外部要因との相互作用の中で、群集組成や細胞外酵素活性の変化を介して無機化過程を規定し、植物群集など生態系内の他の構成要素に影響を与えていると考えられる。

本発表の前半では、まず外部要因−微生物群集−無機化過程の研究がどのように行われてきたのかをレビューする。古典的な研究では、微生物群集の組成分析が技術的に困難であったため、微生物群集は一定の機能が保証されたブラックボックスとして扱われ、外部要因と無機化過程の関係のみが着目されてきた。その中で無機化過程は温度や湿度などの外部要因によって規定されているとされてきた。しかしながら、近年では微生物群集の組成を分析する技術(核酸分析、脂質分析など)の発展を背景に、微生物群集の組成を考慮した外部要因−微生物群集−無機化過程の研究知見が蓄積し、微生物群集の組成も外部要因とともに無機化過程を決定する重要な要因である、という見方が浸透してきた。

さらにごく最近では、微生物群集の活性や組成の変化が植物の生育に必須の栄養塩の供給過程を介して植物群集とどのように関わっているか、ということが注目され始めた。本発表の後半では、このトピックに関連して我々が熱帯山地林で行った実証研究について紹介する。この研究では特に、植物リターの質−土壌微生物群集−CNP無機化過程の関係に着目し、その相互作用が次世代の実生の成長率に与える影響を調べた。


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