| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T15-1

温暖化と生物多様性の共通指標は可能か

山形 与志樹(国環研)

森林減少に伴うグローバルなCO2排出を削減するだけではなく、一度失われてしまえば回復不可能な熱帯林における生物多様性を保全するためにも、「森林減少の防止」による温暖化対策の検討が国際的な課題となっている。「森林減少の防止」は、現在の京都議定書では温暖化対策として認められていないため、途上国も参加する新たな枠組みとしてのポスト京都に関する国際合意に関連して可能性が検討なされている。

森林にかかわる中長期的な温暖化対策に関する国際制度の設計に際しては、地球温暖化の緩和だけではなく、温暖化影響への適応の観点からの検討も重要である。まずは森林生態系の環境機能(緩和と適応にかかわる)を科学的に評価する手法を確立し、「森林減少の防止」の実施によって、CO2の排出がどれだけ削減されたか(緩和対策効果)に関する透明かつ検証可能なモニタリング方法を国際的に利用可能な形で整備する必要がある。また、森林保全による生態系サービスの評価(生物多様性、水・土壌の保全など)によって、森林が果たしている、環境保全機能(適応対策効果)を評価するための方法論を整備することも重要である。

本発表では、気候変動枠組条約のポスト京都における「森林減少の防止」に関する目標設定と、生物多様性条約の新たな目標設定「ポスト2010年目標」における森林保全とのシナジーの可能性を、科学的なアセスメントの観点から議論することを目的とする。特に、国際的なモニタリングの可能性に着目して、近年のリモートセンシング技術の発展によって、森林―非森林の転換やバイオマスの面的変化を定量的に把握することが可能になりつつあることを踏まえて、地球温暖化と生物多様性が連携する目標設定とモニタリング方式に関するオプションについて議論したい。


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