| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T17-1

上流域において樹種ごとの落葉の滞留場所の違いと底生動物の定着について

小林 草平(土木研究所)

山地小渓流の底生動物は食物資源を落葉等の陸由来有機物に大きく依存している。落葉を底生動物が利用するまでには、落葉が河床に滞留すること、また底生動物が滞留場にたどり着くことが必要である。急峻な小渓流は流れや河床地形が不均一であり、落葉が滞留する流れや地形条件は限られている。また一方で、底生動物は流れや河床地形によって侵入し定着できる場所が大きく制約されている場合が多い。したがって、これまで落葉と底生動物の関係についての議論は主に、渓流にどれくらい落葉が滞留しそのうちどれくらいが底生動物に食物として利用されるかであったが、実際に底生動物が利用するまでのプロセスを考慮すると、落葉が滞留する環境と底生動物が侵入・定着できる環境がいかに合致しているかも落葉と底生動物の関係を捉える上で重要となりうる。演者はこれまで小渓流の異なる流れ場(瀬、淵流心、淵川縁)に形成されるリターパッチ(落葉枝の集積)を対象に、落葉と底生動物の関係について研究を行ってきた。本発表では、落葉の形態(大きさ、堅さ)によって滞留しやすいリターパッチが異なること、また底生動物(破砕食者)の種ごとに侵入・定着しやすいリターパッチが見られることなど、落葉と底生動物の関係についてこれまで明らかにしたことを紹介する。質の良い落葉の滞留しやすさと活動性の高い底生動物の侵入・定着しやすさが合致する条件があれば、その場は底生動物の成長や落葉分解のホットスポットとなる。山地小渓流においてこうしたリターパッチのホットスポットが出来る条件について、落葉の滞留と底生動物の侵入・定着の結果を踏まえて、リターパッチの形成を強く制約する河道特性と渓畔樹種の影響を考察する。


日本生態学会