| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


企画集会 T17-2

落葉移動のモニタリング手法について

石平 博(山梨大学)

落葉は河川・森林土壌の双方にとって重要な炭素源、栄養源であり、その存在量や動態が水質や生物環境に与える影響は大きい。しかしながら、森林内における落葉の移動、特に新鮮な落葉の水平方向移動の実態については、未解明な部分が多く残されている。

本研究の目的は、森林域における落葉動態(落下・飛散、林床上移動、渓流への供給および渓流を介した流出)の新たな観測手法を開発することである。特に、近年急速に進歩しているRFID (Radio Frequency Identification)技術を用いることにより、個々の落葉の移動経路の連続的な追跡を可能にする。このように、落葉個体(個葉)の視点から落葉の動きを観察することで、落葉1枚の一生を追跡し、個々の要素の動きの詳細な調査・解析を行う点が本手法の大きな特徴である。個葉追跡を行うための技術として、本研究ではRFID(Radio Frequency Identification)を利用する。RFIDとは、ICチップを埋め込んだ小型のタグ(ICタグ)を物体に装着し、ICタグ読取装置を用いて個体を識別し、専用ソフトウェアで個体情報の管理をするシステムのことである。これまでにも、資材管理や防災・減災システムなどへのRFIDの利用が考えられてきたが、自然環境中の計測に応用された事例は魚類生態の分野を除き、非常に少ない。しかしながら、RFIDが持つ優れた個体識別・管理機能を活用することにより、自然環境における物体の動態観測技術が大きく進展するものと期待される。

講演では、観測手法の概要について説明するとともに、本観測手法を山梨県瑞墻山流域の試験プロットに適用し、I)林床から河川渓流への供給過程、II)渓流内の落葉流出過程について検討した結果についても紹介する。


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