| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-11

落葉広葉樹林における異なる3手法を用いた土壌呼吸の分離

*友常満利, 吉竹晋平, 渡辺真也, 関根有哉 (早稲田大・院・先進理工), 小泉博 (早稲田大・教育)

土壌呼吸 (Sr) を根呼吸 (Rr) と従属栄養生物呼吸 (Hr) に正確に分離することは、生態系の炭素収支を決定するのに重要である。これまで様々な手法でSrに対するRrやHrの寄与率が推定されてきたが、手法による差が大きく、同一環境下で適切な分離手法を検討する必要があった。本研究では、トレンチ法・回帰法・サンプリング法の異なる3手法を用いてSrに対するRrの寄与率を推定し、比較・検討を行った。また、分離されたRr・Hrから、Srの変動要因について明らかにした。

調査は、長野県軽井沢町のコナラを優占種とする冷温帯落葉広葉樹林において、2009年6月から2010年10月まで行った。測定の結果、トレンチ法でのRrの寄与率の平均値は、13% (4 ~ 23%) で、夏に高く冬に低い値を取る明瞭な季節変化を示した。一方、他の2手法では季節変化を示すものの、複数の問題点が確認された。回帰法でのRrの寄与率の平均値は11% (-19 ~ 36%) であったが、Srと根バイオマスの相関が弱く、またHr値がSr値よりも高く推定される月もあった。サンプリング法でのRrの寄与率の平均値は131% (55 ~ 318%) と、他の2手法に比べRr値が高く推定される傾向が見られ、Sr値を超えてしまう月が多く確認された。したがって森林生態系においては、トレンチ法がSrの分離に適する方法であると考えられた。各手法から得られたデータより、Srの変動要因について考察すると、本調査地でのSrの変動にはHrが大きく関与していた。しかし、夏期にはQ10がHrよりもRrの方が高いため、Rrの寄与率は上昇した。さらにRrを太さ別でみると、呼吸活性やバイオマスは細根の方が高いため、Rrの変動には細根が最も強く影響すると考えられる。


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