| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) D1-12

RothCモデルへのベイズ的アプローチによる土壌炭素分解率の温度依存性の推定

櫻井玄(農環研),上村真由子(日大・生物資源),米村正一郎(農環研),飯泉仁之直(農環研),白戸康人(農環研),横沢正幸(農環研)

陸上生態圏における土壌は、非常に多くの有機物を蓄積しており、この土壌炭素分解速度の環境変化に対する応答は、将来の気候変動予測において大きな関心を集めている。ほとんどの土壌炭素動態モデルは、土壌有機物の基礎分解速度が異なる複数のコンパートメントを含んでいるが、温度変化に対する分解率の変化は、どのコンパートメントでも同一であると仮定されている。しかしながら、多くの実験的研究は、土壌有機物の基礎分解率と温度変化に対する分解率変化量は同一ではないことを示唆している。しかし、土壌有機物の基礎分解率と温度変化に対する分解率変化量の関係は、研究によって様々であり、統一的な見解を得ていない。

本研究では、土壌有機物の長期観測データを下に、最もよく利用されているモデルのひとつであるRothamsted Carbon model (RothC) のパラメータをベイズ推定することによって、基礎分解率と温度変化に対する分解率の変化量の関係を検証する。ただし、対象とする観測データは長期にわたるデータであるため、観測期間にわたって同一値をとるとは考えられないパラメータもモデルには含まれている。この問題を解決するために、我々はパーティクルフィルター法とM-Hアルゴリズムのハイブリッド法の適用を試みた。

結果として、土壌分解率が最もコンパートメントは、温度変化に対してより低い感受性を示す結果が得られた。この結果は、単純なアレニウス式から予測される結果と一部合致する。また、土壌の窒素含量が多くなるほど分解率が低下することが示唆された。窒素含量が増加することによって、徐々に酸性度が増していき、土壌有機物の分解速度に抑制がかかっている可能性がある。


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