| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) F2-12

春先の気温の年次変動がミズナラの開葉に及ぼす影響

*生方正俊,那須仁弥,福田陽子(森林総研・林育セ北海道)

落葉広葉樹の開葉時期は、一般に春先の気温の影響を受け、気温が高い春は早くなり、気温の低い春は遅くなることが知られている。また、広域に分布する種は、様々な地域の環境に適応して生育していることから、地域集団ごとに環境変動に対するふるまいが異なっていることが予想される。地域集団ごとに気候変動に対する反応が明らかになれば、今後予想される地球規模の温暖化によって引き起こされる種の分布域の変化をより詳細に予測することが可能となると考えられる。

ミズナラの地理的変異および環境変動に対する反応の産地間差異を解明する研究の一環として、北海道内各地から収集され,江別市の森林総合研究所林木育種センター北海道育種場内に植栽されている56産地377系統のミズナラについて,開葉時期の年次変動の調査を行った。

調査は1993年、1994年、2009年および2010年の4年間の4月から6月にかけて実施した。この4年間のうち春先の気温が低めの1993年、2009年と高めの1994年、2009年には、4月および5月の平均気温でそれぞれ約1.5℃および約2.0℃の差があった。冬芽の芽鱗がゆるみ内側の緑色の部分が露出した日を開葉日とすると、最も早く開葉する産地と最も遅い産地の間に約2週間の違いがみられた。また、全体的にみると、開葉の順位は、北海道の西部地域の産地から東部地域の産地へ進むという傾向はかわらなかったが、開葉の早い産地ほど順位の年次変動が比較的大きい傾向がみられた。


日本生態学会