| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-11

プランクトン食魚による特定外来生物カワヒバリガイの幼生への捕食圧

*中野大助,小林卓也,坂口勇(電力中央研究所)

特定外来生物に指定されているカワヒバリガイLimnoperna fortuneiは淡水性二枚貝で、利水施設や在来の生態系に深刻な被害を及ぼす。本種の分布拡大防止や生息密度低減に効果的な対策の考案が望まれている。本種はその生活史の中に浮遊幼生期を持つ。浮遊幼生期は捕食からの回避が難しいことから、動物プランクトン食魚を用いた生物的防除によって本種の密度低減を行えないかと考えた。本種幼生は沖帯に広く分布することから、沖帯を生息場所とする本邦で代表的な動物プランクトン食魚であるワカサギHypomesus nipponensisに白羽の矢を立てその捕食圧をメソコスム実験により調査した。

大塩貯水池にメソコスム(直径56cm,高さ83cm、容量200L)6基を設置し、3基を対照区(ワカサギなし)、残り3基をワカサギ区(ワカサギあり)とした。全6基にカワヒバリガイ幼生を含む大塩貯水池の動物プランクトンを入れた後、ワカサギ区には15~18尾のワカサギを投入した。実験期間は2日間で、ワカサギ投入後に2回、全6基に対して動物プランクトンの追加を行った。実験後、ミジンコの密度は、対照区に比べてワカサギ区で有意に低い値となった。一方、カワヒバリガイ幼生の平均密度は、対照区77.0個体/Lに対して、ワカサギ区では65.3個体/Lであり統計的な有意差は見られなかった。しかし、ワカサギ区の中で1基だけカワヒバリガイ幼生密度が44.5個体/Lと低くなっているものがあった。この基に投入されたワカサギ体サイズの中央値は5.3cmと他の2基(6.3cmと6.2cm)よりも小さく、5cm未満の個体が多く含まれていた。そのため、体サイズの小さなワカサギによって、ミジンコよりサイズの小さなカワヒバリガイ幼生も捕食されたものと推察される。


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