| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I2-13

Impact of submerged macrophyte infochemicals on life history parameters of zooplankton (Daphnia galeata)

河 鎭龍*, 花里孝幸 (信州大学山岳科学総合研究所)

沈水植物は浅くてある程度富栄養している湖で良い水質を維持する重要な役割をしている。特に、沈水植物の中でコカナダモ(Elodea nuttallii)は春早く群落を形成し、湖内で分布を広め、水質を改善する事が報告されている。一方、動物プランクトン(Daphnia)は、湖を汚濁させる主な原因である植物プランクトンを摂食して減少させ、良好な水質を維持させる力を持っている。ただし、Daphniaは魚の良い餌となる事から魚が多い湖では増えることが出来ない。ところが、沈水植物帯がつくられると、そこには魚が入れない場所となるので結果としてDaphniaを魚の捕食から守る事になる。そして、この事も湖の水質浄化に役立つ事になる。一方、コカナダモは付着藻類の増殖を制限する化学物質(アレロパシー)を放出する事が知られている。我々は、このアレロパシーが動物プランクトンにも何等かの影響を及ぼすのではないかと考えた。そこで、コカナダモのアレロパシーにさらされた時の動物プランクトン( D. galeata)の生活史特性の変化を解析した。まず、異なる餌密度条件下でDaphnia個体群をアレロパシーにさらした際、Daphniaは餌が多い時、沈水植物を栽培し、濾過した水で飼育した処理群の個体群密度が最も高くなった。一方、アレロパシーにさらされたDaphnia個体群では餌の濃度とは関係なく雄が現れ、また耐久卵をつくった個体が出現した。さらに、無脊椎捕食者に対する防御メカニズムと考えられているDaphniaの形態変化がアレロパシーによって誘導された。このことから、Daphniaは沈水植物が出す情報化学物質を感知し、水草帯での餌の減少や、無脊椎捕食者の増加などに対応している可能性が示唆された。


日本生態学会