| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-013

広島県内の魚つき保安林とその周辺の森林構造

(*島田拓也・広島大・総科,中越信和・広島大・院・国際協力)

魚つき保安林は海岸線や河川、湖沼の周辺で、魚類の棲息と繁殖を助けることを目的に指定された保安林である。保安林に指定される以前からの歴史を遡ると、旧幕藩時代から魚つき保安林の歴史は続いている。期待される効果は陰影、防風水温、水中微生物の供給、河川流域量調節等、環境保全、美化がある。しかし、今までこれらの効果は研究による実証例があって定められたものではなく、漁業者の経験から予測したものである。この研究の目的は広島県内の魚つき保安林とその周辺の森林構造を明らかにし、さらに周囲の環境を手がかりに魚つき保安林としてどのような機能を担っているか推測することである。実際には広島県内の魚つき保安林は近年管理されていない状況下にあり、放置林となっている。呉市(倉橋町、下蒲刈町)、竹原市、福山市(内海町)の13地点で魚つき保安林の植生調査を行った。得られた植生調査の結果から優占種を識別し、常在度表、群落構成表を作成した。加えて広島県内の魚つき保安林の立地状況、周囲の環境、地質などのデータも参照して考察を行った。その結果広島県内の魚つき保安林はコバノミツバツツジ-アカマツ群集とコシダ-ウバメガシ群集に2大別された。両群集とも広島県の沿岸部、島嶼部の瀬戸内海気候や地質を反映している植物群集である。土壌は花崗岩、安山岩の風化土壌が多く、主に断崖に分布していた。また区分された群集別の階層構造、出現した植物から遷移方向の推定も行った。


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