| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-040

島から見える雑草の分散過程と種間相互作用

*高倉耕一(大阪市環科研), 藤井伸二(人間環境大)

生物の分布拡大速度を推定することは、有害生物管理など応用生物学的な場面でしばしば重要である。しかし、既存の分布域が外側に向かって徐々に拡大するだけでなく、飛び火的に新たな分布域が生じる場合には、分布拡大速度を推定することは困難である。このような飛び火的分布拡大は、実際に有害外来生物でしばしば観察され、分布拡大の阻止や予測を困難にしている。どのような生物において飛び火的な分布拡大が生じやすいのかを理解することは、生物の分布拡大の理解だけでなく、有害生物管理における防除手法検討においても重要であろう。

本研究では、瀬戸内海の島嶼地域において外来雑草の分布状況を調査し、それに基づきそれらの雑草種の飛び火的分布拡大の頻度を比較した。調査の対象としたのは、オオバコ科イヌノフグリ類、アブラナ科タネツケバナ類、イネ科スズメノカタビラ類である。調査の結果、島への侵入・定着の頻度、および在来種の分布への影響は、分類群ごとに異なり、近縁種間においても大きく異なっていた。例えば、本地域に侵入していた外来イヌノフグリ類は、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、フラサバソウの3種であったが、島への侵入・定着頻度が高いのは、タチイヌノフグリとフラサバソウであった。本土地域への定着が最も遅かったのはフラサバソウなので、本種の飛び火的な分布拡大の速度は飛び抜けて大きかったことが推定された。また、タチイヌノフグリとフラサバソウの頻度は、在来種イヌノフグリの頻度とは無関係であったが、オオイヌノフグリが侵入・定着した島では在来種頻度が極端に低かった。

これらの外来雑草の侵入・定着のパターンに基づき、外来雑草における飛び火的分布拡大の頻度とその要因について議論する。また、近縁在来種の頻度との関係から、これらの外来雑草と在来種との間の相互作用についても議論する。


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