| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-050

マタタビ(Actinidia polygama)における繁殖コストと栄養成長の性差

*中山晴夏(新潟大・院),崎尾均(新潟大・農)

性的二型の植物においては、雄と雌の繁殖コストの差が様々な性差を引き起こすことが指摘されている。性差は植物の繁殖様式がどのように進化し維持されてきたかを考えるための基礎的情報となる。本研究では、雌雄異株植物であるマタタビを材料とし、繁殖コスト(花生産、果実生産にかかるコスト)と栄養成長(葉の乾燥重量等)における性差を検討した。植物のモジュール構造は個体の繁殖コストの算定に大きく関係しており、資源の分配調整は個体全体よりも半独立したシュートや節などで見られるという例もあることから、シュートにおける性差を検討した。

当年枝あたりの繁殖コストは、花生産においては雄個体の方が大きかった。これは、雄花の方が乾燥重量が大きく、花の数も多いためであった。しかし、雌個体は果実生産におけるコストが非常に大きく、花生産と果実生産をあわせた繁殖全体のコストは雌個体の方が大きかった。また、ある程度長さのある当年枝には花をつけるが、短い当年枝には花をつけない傾向が、雌雄共に見られた。

葉の乾燥重量は葉の面積と性別に相関があり、雄の方が葉の面積に対する乾燥重量が大きかった。当年枝の長さと当年枝についた葉の乾燥重量の合計にも同様の相関が見られた。また、雄個体の落葉が11月であるのに対し、雌個体は10月に落葉する傾向が見られた。昨年枝長に対する当年枝の本数及び当年枝の長さの合計は、雄個体は正の相関があるのに対し、雌個体は昨年枝の長さにかかわらずほぼ一定であった。

以上のことから、雄個体は雌個体に比べて繁殖コストがかからない分、葉に多くの資源を投資し、雌個体は繁殖コストがかかる分、葉や枝への投資が制限されている可能性がある。


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