| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-055

熱帯高木Dipterocarpus tempehesの13年間の実生動態比較と捕食者飽食仮説の検討

*小早川浩志(名大院・生命農), 大島千明(名大), 中川弥智子(名大院・生命農), 田中健太(筑波大・菅平セ), 竹内やよい(総研大), 佐藤香織, 箕口秀夫(新潟大・自然科学系), 中静透(東北大)

東南アジアの低地混交フタバガキ林では、一斉開花(general flowering)が起こる。一斉開花とは、2~10年の不規則な間隔で、多くの種が数カ月以内に同調して開花・結実する現象であり、これは、幅広い分類群の種が参加するという点で特徴的なマスティング現象である。一斉開花現象の究極要因を説明する主要な仮説の一つに、捕食者飽食仮説があるが、本研究では、種子散布後の段階に注目し、複数回の種子・実生デモグラフィーから、捕食者飽食仮説の検証を試みた。

調査は、マレーシアのランビルヒルズ国立公園内で行い、材料には、一斉開花に参加する林冠構成種を多く含むフタバガキ科のDipterocarpus tempehesを用いた。この種では、これまでの一斉開花年における実生デモグラフィーデータが蓄積されている。また、げっ歯類が種子散布後の段階において主要な捕食者であること、それがフタバガキ科樹木に対するジェネラリストであることが報告されている。これらの情報と群集レベルでの開花・結実データと合わせて解析を行った。

調査地では、1997年以降6回(1997、1998、2002、2004、2005、2010年)の一斉開花が確認された。各一斉開花年の種子・実生デモグラフィーデータは調査期間や間隔が一定ではないものの、一斉開花年による種子・実生の生残パターンの違いや、ある時点における生残率と個体群および群集レベルの種子生産量との関係から捕食者飽食の効果を検討する。


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