| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-088

落葉広葉樹林キャノピーの光合成生産力とその季節性

*村岡裕由(岐阜大),野田響(筑波大),永井信(JAMSTEC),本岡毅(JAXA),奈佐原顕郎(筑波大),三枝信子(国環研)

森林生態系の機能は個葉スケールでの生理生態学的特性(光合成,蒸散)から群落構造(葉面積指数),景域スケールでの森林タイプや密度の空間分布に至るまで,時間的(秒~年)・空間的(数cm2~数km2)に広いレンジの生態学的な環境応答によって形成される。炭素吸収能力を例に挙げれば,森林キャノピーの光合成生産量は個葉の光合成能力とキャノピーの葉量によって規定されるが,これらの機能量そのものが季節的に変動し,また,気象環境と過去の生産量の影響を受けて経年変動を示す。植物の生理生態学的なダイナミクスを生態系機能のダイナミクスと関連づけた研究とモニタリングを推進するためには,植物生理生態学研究,微気象学的観測,リモートセンシング,モデリングを融合させた総合的アプローチが有効である。

著者らは冷温帯落葉広葉樹林(AsiaFluxおよびJaLTERの高山サイト)の光合成生産力とその季節性の解明およびモニタリング手法開発を目的として,(1)林冠木個葉の光合成・色素・分光特性,(2)林冠の葉面積指数,(3)林冠の分光反射特性,(4)森林のCO2フラックスの連続観測,(5)森林の総光合成速度(GPP)のモデル推定などを2003年から継続している。生理生態的測定とモデル解析の結果,研究対象とした森林のGPPの経年変動は,展葉期と落葉期の個葉光合成能と葉量の季節変化の違い,および夏期の微気象環境の違いによって生じることが示された。これは葉群フェノロジーの広域モニタリングが気候変動影響解明と予測に重要であることを示唆する。本発表ではさらに光合成生産力の生理生態的プロセスのリモートセンシング手法の検証状況について報告する。


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