| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-102

植物の地上部と地下部の形態の関連:コーナー則は地下部に適用可能か?

*長田典之(京都大・フィールド研),藤井佐織(京都大・農),徳地直子(京都大・フィールド研)

植物の葉・枝・根の性質は多様であり、その種の生存・成長戦略を反映する。これらの様々な性質は独立して変化できず、一定の相関関係が成立する。例えば陽葉を多種比較すると、寿命が長い葉ほど葉面積/葉重比や窒素含量、光合成速度が低い傾向があり、葉の経済スペクトルと呼ばれる。また、細根の根長/根重比や直径、窒素含量、寿命などの性質どうしにも相関関係があり、さらに葉と細根の性質も関連している可能性が指摘されている。

一方、植物の地上部の分枝形態も種によって多様である。一般に個葉サイズが大きい種では枝が太く分枝頻度が少ない。これはコーナー則と呼ばれる。なお、コーナー則は葉の経済スペクトルとはある程度独立していると考えられている。コーナー則はこれまで主に地上部のみを対象としていたが、根の性質とも関連している可能性がある。例えば、個葉サイズが大きい種ほど根の分岐頻度が少なく、細根直径が大きいと予想される。しかし、葉の経済スペクトルとコーナー則が根の性質に与える相対的な影響の大きさは不明である。細根の性質は植物個体の栄養塩吸収能力に影響することによって葉の性質にも影響を与えていると考えられており、植物の様々な部位の性質の関連性を整理することは非常に重要である。

本研究では、日本の樹木260種以上を対象として、文献データをもとに、個葉サイズ、細根直径、根の分枝頻度などの性質の関連を調べた。この結果、個葉サイズが大きい種ほど根の分岐頻度が少なく細根直径が大きい傾向がみられ、コーナー則が地下部にも拡張できる可能性が示された。さらに京都市近郊において100種以上の樹種について陽葉の葉面積/葉重比を測定し、葉の経済スペクトル(葉面積/葉重比)とコーナー則(個葉サイズ)が根の性質に及ぼす影響の相対的な大きさについても解析を行っている。本発表ではこの結果についても議論する。


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