| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-158

ヒノキ林における土壌無機態窒素の制御要因

*米田聡美(京大院・農),臼井伸章(京大院・農),徳地直子(京大・フィールド研),大手信人(東大院・農),勝山正則(京大院・農),福島慶太郎(京大・フィールド研)

森林土壌において窒素(N)の無機化及び硝化過程の把握は、森林生態系の窒素動態を把握するために重要である。これまで森林土壌の窒素については、土壌培養前後の無機態窒素の変化量、すなわちみかけの生成速度(純速度)で評価されてきた。しかし、この方法では不動化量が反映されず、真の生成速度(総速度)とは異なる。本研究では、森林土壌の窒素動態をより正確に評価するため、土壌の窒素無機化・硝化の総速度を測定し、年間の動態を明らかにすることを目的とした。また森林生態系の窒素循環を再考察し、窒素循環の制御要因を検討した。

本調査は、滋賀県大津市桐生試験地で行った。季節ごとにA0層及び鉱質土壌層(M層)0-10cmの土壌をサンプリングし、現地培養コア、イオン交換樹脂を設置した。持ち帰ったサンプルは無機態窒素現存量及びビン培養法による純速度の測定、15N同位体希釈法による総速度の推定を行った。

アンモニア態窒素の現存量はA0層で含水率と、M層で気温、降水量と関係がみられた。純無機化速度は夏期に高く、秋期に低い傾向がみられた。純速度・総速度・無機態窒素消費速度の結果から、冬期のA0層とM層及び夏期のA0層では有機態窒素が無機化され、生成されたアンモニア態窒素が生成し、不動化されて再び有機態窒素へ戻る循環が主要であることが示唆された。対して、夏期のM層では硝化を含む循環経路が主要であった。これらのことから、季節的に主要な循環経路とそれに関わる制限要因の変化が示唆された。


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