| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-167

階層ベイズモデルを用いた農耕地からのN2O,NO排出と環境応答評価

*仁科一哉, 秋山博子, 須藤重人(農環研), 西村誠一(中央農研)

農業生態系は主要な亜酸化窒素(N2O)、一酸化窒素(NO)ガスの排出源である。N2O、NOともに、土壌中では主として硝化、脱窒という二つのプロセスにより生成されている。N2Oは主要な温室効果ガスの一つであり、また成層圏オゾンの破壊を促す、笑えないガスである。一方、NOは酸性雨の前駆物質であり、光化学スモッグの原因物質である。これらのガスは大気中では微量であるが、大気化学プロセスに大きな役割を果たしている。しかし依然としてN2O、NOの両窒素酸化物ガスともに、その排出量の推定には大きな不確実性を示すことが指摘されている。不確実性の低減、およびその評価には、N2O、NOフラックスの環境要因への応答、とりわけN施肥に対する応答の定量的な評価とそのモデル化が重要である。

本研究では、農環研ライシメーター圃場における1996年から2000年におけるN2O、NOフラックス観測結果について、階層ベイズモデルの枠組みを用いたモデル化とMCMCを用いたパラメータ推定により、環境因子への応答を評価した。応答変数はN2O、NOフラックスであり、これらは対数正規分布であると仮定した。モデルで着目する因子(説明変数)は、地温、土壌水分、施肥量、及び施肥後日数であり、モデルはこれらの因子を関数とした非線形の制限関数の積となっている。また、ランダム効果として、ライシメーターのブロックを考慮した。得られたパラメータの事後分布を基に、N施肥投入量に対する各Nガス放出量の割合である排出係数の算出を行った。

ポスターでは、さらに各ガスフラックスの温度や土壌水分依存性について議論する。また排出係数算出に関しては従来法による台形積分法による推定値との比較を行い、不確実性評価の是非について報告をする。


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