| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-195

植生と環境要因が地上徘徊性昆虫の群集構造と多様性に与える影響

*小粥隆弘(筑波大・生命環境), 上條隆志(筑波大・生命環境), 田中健太(筑波大・菅平セ)

地上徘徊性昆虫は環境変化に敏感に反応することが知られている。中でもオサムシ科昆虫(Carabidae)は、環境指標生物として世界中で用いられている。しかし、我が国の景観と生物多様性の関係を理解する上で重要と考えられる、(1)草原から森林への遷移段階、(2)人工針葉樹林と天然針葉樹林の違い、(3)ササの有無、が昆虫群集に与える影響はほとんど分かっていない。これらの点を、明らかにすることが本研究の目的である。

調査は筑波大学菅平高原実験センター内および周辺で行った。草原・天然アカマツ林・天然広葉樹林・人工カラマツ林の4植生について各3~4反復、計13プロットを設定した。各プロットに5地点を設け、地点ごとに4つのピットフォール(落とし穴)トラップを設置した(合計260個)。2009年6・8・9・10月に各3日間ずつ、計12日間トラップを開放し、捕まった昆虫のうち甲虫目(Coleoptera)は科レベル、オサムシ科は種レベルまで同定し、個体数を数えた。各地点の環境要因としてリター・ササ・土壌など9項目について、年1-4回計測した。現在、4回分の個体数調査の結果を解析中であるが、暫定的に6・8月の2回分のデータを用いた結果は以下のようであった。甲虫目の科数・個体数、オサムシ科の種数・個体数を従属変数とし、植生と環境要因を独立変数として、一般化線形混合モデル(GLMM)を用い、AICによるモデル選択を行った(ソフトウェアR 2.10.1による)。その結果、(1)草原→アカマツ林→広葉樹林という遷移系列に沿って甲虫目個体数は増加した。 (2)意外にも、人工カラマツ林では地上徘徊性昆虫のアバンダンスと多様性が高かった。(3)ササが存在すると甲虫目個体数が増加したが、顕著ではなく今後の検討が必要である。ここに、さらに2回分の調査データを加えた結果を、報告する。


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