| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-217

白山で発見されたライチョウは何を語るのか

*上馬康生(石川県白山自然),佐川貴久(石川県白山自然)

白山(標高2,702m)では、ライチョウは1930年代後半頃には絶滅したとされていた(花井・徳本,1976)。その後、確実な生息確認はなかったが、2009年5月26日に白山で撮影された写真が届き、現地調査を行ったところ同6月2日に雌1羽の生息を確認した。それ以来2010年11月まで現地調査を継続するとともに過去の生息情報の収集を行うことで、このライチョウがどこから来たのか、今後の生息はどうなるのか、また白山から絶滅したのはいつ頃かなどを考察した。

行動観察中に羽繕いで落とした羽毛を用いてDNA分析を行ったところ、今まで日本で明らかとなっている6つのハプロタイプの内のLmHi1と判明した(中谷内・上馬,2010)。同じハプロタイプのライチョウ生息地の山岳での個体数や白山との位置関係から、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山あたりからの飛来が考えられた。また白山には、北アルプスの越冬地の生息環境と同様の環境があることと、少なくともライチョウが1年越冬したことから、通年の生息に適した環境があることが分かったが、春先から営巣期の生息適地の面積が広くないことなど、環境収容力は多くないと考えられる。

白山で1955年に撮影されたとされる写真とその撮影者からの聞き取り等で、1950年代後半まではライチョウが生息していた可能性もでてきた。また2008年に白山山頂から直線距離で約6km離れた別山で撮影された雌の写真が見つかったことから、この個体が2009年発見個体と同じ可能性と、別の個体として白山に飛来していた可能性とが考えられる。いずれにしても、時々は北アルプス等からの飛来があり、過去にもこのようなことで生息維持がはかられていたのではないかと考える。


日本生態学会