| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-270

都市部の公園におけるセミ類の生息状況

*徳永元(明治大・農),倉本宣(明治大・農)

生息地となる樹林の量と質がセミ類に影響しているとされている。そのため市街化の影響を受けている種としてセミ類が挙げられている。しかし都市部におけるセミ類の定量的なデータはまだ少ない。そこで本研究では都市部の公園におけるセミ類の生息状況を調査し、都市部におけるセ ミ類の多様性を維持する公園管理に寄与することを目的とした。

調査は、2010年7月から9月にかけて神奈川県横浜市神奈川区神奈川公園、幸ヶ谷公園、反町公園、港北区岸根公園にて行った。週に1度公園内をまわり、 樹木を下から見上げ、ぬけがらを探し、虫取り網(長さ1.85m)が届く範囲のぬけがらを採取した。セミの種類、樹種を記録し、各公園の 種別割合、雌雄割合、発生消長をもとめた。

神奈川公園、幸ヶ谷公園、反町公園の調査樹木本数はそれぞれ141本、59本、119本であり、採取したアブラゼミとミンミンゼミのぬけがら個数はそれぞれ2,147個と114個、489個と181個、647個と0個であった。岸根公園は652本の樹木を調査し、アブラゼミ2,485個、ミンミンゼミ 123個、ニイニイゼミ11個、ツクツクボウシ1個となった。ぬけがら数と樹木本数には関連がみられなかった。種別割合は幸ヶ谷公園を除きアブラゼミが約 9割を占めた。アブラゼミとミンミンゼミの性比は雄がやや多い結果となった。発生消長はどの公園も似た傾向を示し、8月前半にぬけがらが多く出現した。また雄が先に発生する傾向がみられた。樹種では、ミンミンゼミのぬけがらが落葉樹に多く付着している傾向がみられた。アブラゼミではそのような偏りはみられ なかった。

この結果から、都市部の公園の樹種の選択に当たって、セミ類の多様性にも配慮することを提案したい。


日本生態学会