| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-307

絶滅危惧種オオセッカ Locustella pryeri の繁殖生態 -特殊な植生環境選択の理由-

*高橋雅雄,上沖正欣(立教大・理・動物生態),蛯名純一,宮彰男(NPOおおせっからんど),上田恵介(立教大・理・動物生態)

オオセッカはスズメ目ウグイス科に属する極東固有種で、日本では北東北と北関東の特定の湿地草原に約2500羽のみが生息する。この局所分布と希少性のため、絶滅危惧1B類に指定され法的に保護されているが、詳細な保全生態学的研究は極めて少なく、的確な保全案を策定する上で急務となっている。

本種の生態的特徴として、“環境選好の特殊性”が知られている。即ち、本種のオスは多くの草原棲鳥類とは異なり、湿地草原の中でもヨシの背丈が2m前後に抑制された特殊なヨシ原環境(中層ヨシ)を好むとされる。この“環境選好の特殊性”は、本種の局所分布や希少性の要因と考えられ、繁殖個体群が次々と消失した過去の経緯についても、この側面より考察されてきた。しかし、本種はメスがほとんどの営巣活動を担う一夫多妻種であり、オスの環境選好から実際の繁殖状況を評価することは難しい。言い換えると、営巣環境等を含めた繁殖生態に関する研究はほとんど行われていないため、このオスの環境選好と繁殖生態との関係については全く分かっていない。

演者らは2007年から2009年の5月から9月にかけて、国内最大の繁殖地である青森県三沢市の仏沼湿原にて詳細かつ大規模な繁殖生態調査を行った。3年間で個体識別した計121個体のなわばりオスを継続観察し、計178巣の繁殖を確認した。本発表では、オオセッカのオスの植生選好を、①営巣環境、②メスの配偶者選択、③巣の捕食圧の方面からそれぞれ検証する。その上で、“環境選好の特殊性”と繁殖生態との関係について論じる。


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