| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-329

北海道の天然林における植物多様性の簡易評価手法

八坂通泰(道総研・林業試)

天然林の植物多様性のモニタリングや多様性に配慮した森林管理の効果的かつ効率的な実施に貢献するため、植物の多様性を簡易に評価するための手法を提案することを目的としました。

道内の天然林242林分における植生調査データを分析した結果、天然林に出現する植物の種数は草本層で多く60%以上を占めることがわかりました。また、草本層における出現種数が増加すると、レッドデータブックに掲載されている植物の出現確率が上昇していました。さらに、植物の多様性は他の生物の多様性の指標とも関係があるとも考えられています。これらのことから、ここでは草本層の出現種数を天然林の植物多様性の指標としました。

道内天然林201林分の植生調査データを樹形モデルという統計手法を用い分析し、林分構造(クマイザサ、チシマザサ、高木層の被度、高木層の混交率)によって潜在的な草本層の多様性を評価する手法を考案しました。ここでの混交率とは、針葉樹もしくは広葉樹の植被率が100%のときは0%、針葉樹と広葉樹の植被率が50%のとき100%です。考案した手法において植物多様性を評価するためには、まず評価対象の森林(400m2程度の範囲)の林床のクマイザサの植被率を調べます。例えば、植被率が80%以上の場合、次に高木層の植被率を観察し80%以上のとき多様性は普通(平均的)であると判断できます。一方、高木層の植被率が80%未満のときには多様性は低いと予測されます。この方法を用いることで、簡易に様々なタイプの森林の植物多様性が評価できるだけでなく、植物多様性が劣化した森林の修復にも利用できる可能性があります。


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