| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-019

知床羅臼岳における,標高傾度に沿ったササラダニ群集と環境要因の関係

*太田藍乃(横浜国大・環境情報),森章(横浜国大・環境情報),大園享司(京大生態研セ),保原達(酪農大),水町衣里(京都大・iCeMS),萩原佑亮(京大院・農),塩野貴之(横浜国大・環境情報),小出大(横浜国大・環境情報)

中型土壌動物の1群であるササラダニ亜目の多くは,土壌中に高密度で生息し,腐植や微生物を摂食することで,有機物を分解し,物質循環に影響を及ぼしている.また,森林の種多様性により種組成が変化することが知られている.しかし,ササラダニ亜目がリター層と土壌表層0cmから5cmに生息していることを考慮すると,種組成の変化は,植生からの直接的な影響だけでなく,リターなどの土壌環境が効いている可能性もある.本研究では,環境要因を植生環境と土壌環境の2つに分けて解析を行い,ササラダニ亜目の種組成を変化させている要因を探った.

調査は,羅臼岳標高200mから1200m地点において200mおきに6箇所で行った.植生とササラダニ亜目のα・β多様性を比較した.また,植生環境と土壌環境とササラダニ亜目種多様性の解析には,GLMを用いた.目的変数としてササラダニ亜目の種数と個体数を使用し,独立変数として植生環境は,木本個体数,種数(木本,単子葉,双子葉,シダ),土壌環境は,リター層(重量,含水率,pH,厚さ)を用い,AICによる説明変数の選択を行った.

標高経度に沿った木本・草本植物とササラダニのβ多様性は単調減少し,正の相関があった.α多様性はいずれの生物群も一山型を示し,弱い相関があった.ササラダニ亜目の個体数に関しては目立った環境要因が抽出されず,種数に関しては植生環境として木本種数,土壌環境としてリター厚が抽出され,リター厚がより当てはまりのよい説明変数として選択された.ササラダニ亜目の種組成は,植生だけでなく土壌環境に,より影響を受けていることが示された.


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