| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-030

アマモの種子はどこへ行くのか?

*細川真也(港空研),仲岡雅裕(北大),三好英一(港空研),桑江朝比呂(港空研)

アマモの種子散布には,種子が親株の組織とともに水面を浮遊して遠くまで運ばれるメカニズムとその場に落下して底質輸送として運ばれるメカニズムが存在する.前者については,穂(種子を含むコンポーネント),穂の集合体(穂が束となったもの),生殖株(穂やその集合体を含む一つの株)とともに輸送されると考えられてきたが,その定量的な追跡は行われていない.そこで久里浜湾において生育するアマモを対象に,生殖株における穂とその集合体の痕跡と汀線に打ちあがっている種子の状態について調査した.さらに,それらコンポーネントの浮き沈み試験を行った.その結果,種子は穂とともに輸送され,未成熟段階においては浮き,成熟段階においては沈むことが明らかとなった.この浮き沈みには,穂に含まれる種子の数が強く影響していることが示された.単位面積当たりの生産された種子量とパッチ内に残存する種子量を比較したところ,生産された種子は1/2 から1/3 が発芽時期(翌年1 月)までパッチ内に残存していることが推定された.これより,久里浜湾においては,アマモの種子は,主にその場に落下して海底付近を移動していく可能性が高いと考えられる.


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