| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-072

関東・甲信地方の山地草原・落葉広葉樹二次林における草原生植物の生育状況の変化

*大津千晶,星野義延(東京農工大・院・農),末崎朗(新潟県庁)

全国各地で半自然草原・二次林の利用の減退や,高密度化したニホンジカ(以下,シカ)の食害により,草原生植物種の保全の緊急性が高まっている.同時に,二次的自然においては過去の土地利用履歴を考慮した種の保全対策の重要性が指摘されている.本研究では1980年代に植生調査を行った地域の山地草原・落葉広葉樹二次林において追跡調査を行い,1980年代と2000年代で過去の土地利用の履歴とシカの植生利用が草原生種の種数に与える影響を調べた.

調査地点は関東・甲信地方の山地帯の18地域の200地点である.2008年から2010年の7月から9月に植生の追跡調査と,シカの植生利用度の指標として一定面積内のシカの糞粒数のカウントを行った.過去の草原面積割合を1910,1960,1980,2000年代に作成された地形図から点格子法により算出した.森林においては二次的利用強度の指標として高木層構成種のDBH,樹高,萌芽率を記録した.

森林林床における草原生種の種数は1980年代には高木層構成種のDBH,樹高と有意な負の相関,萌芽率と正の相関が認められた.2000年代にも同じ傾向はみられるものの相関係数は小さくなった.2000年代と1980年代の草原生種の種数の差はシカの植生利用度と負の相関が認められた.

草原においては,1980年代から2000年代の間管理されていない地点の草原生種の種数は1910年代の草原面積比と正の相関があった.2000年代の種数は1910年代の草原面積比とさらに強い正の相関を示した.管理されている地点の種数は過去の草原面積割合と有意な相関はなかった.管理されている地点においては2000年代と1980年代の草原生種の種数の差はシカの植生利用度と有意な負の相関を示したが,管理されていない地点においては有意な相関は認められなかった.


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