| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-079

北海道厚岸湖におけるアマモ場の空間分布と生物多様性

*渡辺健太郎(北大・厚岸), 東条斉興(JICA), 堀正和(瀬戸内水研), 田中義幸(JAMSTEC・むつ), 鎌内宏光(北大・厚岸), Napakhwan Whanpetch(千葉大・理), 山田勝雅(千葉県水研セ・東京湾漁研), Laura K. Reynolds (Virginia Univ.), 百田恭輔(北大・水産),仲岡雅裕(北大・厚岸)

水生顕花植物であるアマモは高い一次生産性を示し、底質の安定化、水質の浄化、三次元構造による他生物への生息場所の提供など多くの生態系機能を有している。その結果、アマモ場の生物多様性は非常に高いことが知られている。北海道東部太平洋側の厚岸湖全域には、約12km2のアマモ場が広がっている。本研究では、飛行機や無人気球による空中写真、および衛星画像を利用したリモートセンシングにより、厚岸湖におけるアマモ場の景観構造を明らかにし、その生産性など生態系機能との関連を明らかにするとともに、そこに成立する生物群集構造との関係を解明することを目的とした。厚岸湖のアマモ場は1970年代からその面積を変動させており、近年は回復傾向にあることが明らかになった。しかし、特に浅い水域でのアマモ場の景観構造は年によって大きく異なっており、調査地とした湖北部では、2008年の面積が3397 m2だったものが、2009年には4148 m2と大きく拡大した。亜寒帯にある厚岸湖のアマモ場は、冬季にハクチョウによる被食や結氷による浸食という撹乱を受けており、これが浅い水域での植生の著しい変化の原因となっていると考えられる。アマモの植生パッチの内外でマクロベントス群集の構成と量を比較したところ、他の海域で見られるような大きな差が見られなかった。これには、上記のような撹乱に伴うパッチの変動が関連していると推測された。


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