| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-100

中間的自殖率はどのようにもたらされるか:オオヤマオダマキにおける時間的・空間的変異と花形質による影響

板垣智之・酒井聡樹(東北大・院・生命)

多くの植物は自殖性か他殖性を示すと言われている。一方で中間的な自殖率を示す植物も少なくない。自家和合性植物の自殖率は、自家・他家花粉の受粉量とタイミングによって決まる。それらの受粉が個体・花ごとに異なるために中間的自殖率がもたらされると考えられる。

本研究では、個体ごと・花ごとの自殖率と、自殖率に影響すると考えられる複数の形質との関係を明らかにすることを目的とした。材料を雄性先熟性で自家和合性のオオヤマオダマキとして、調査は2007・2009年に岩手県の2つの野外集団で行った。個体ごとに、個体サイズ、同時開花数、花ごとに、花サイズ、花粉・胚珠数、開花フェノロジー、ポリネーターの訪花数・滞在時間を調べた。自殖率は、花ごとに13遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝型解析から求めた。

その結果、個体ごとの自殖率は花序数が多い個体ほど有意に高かった。花序内の花間に開花の重なりはほとんどないことから、花序が多いと花序間での隣花受粉が増えるためと考えられる。花間では自殖率に差はなかった。花サイズなどの花形質にバラつきが見られたが、自殖率に影響はないようだった。2集団間で花あたりの自殖率は差がなかった。

これらの結果から、個体サイズの違いのために、個体ごとに異なる自殖率がもたらされていることがわかった。花サイズやハーコガミーなど花形質の違いは自家・他家花粉の受粉のしやすさに影響すると考えられるが、個体サイズの影響が大きいため、花間で自殖率に差がみられなかったのではないか。


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