| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-105

ニセアカシアの非休眠種子の割合の個体差-年別の比較とその役割-

*千葉 翔, 小山浩正, 高橋教夫(山形大・農)

ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)は北米原産の外来種で、河川域を中心に分布を拡大しており、駆除・管理対策が求められている。この種の種子には、休眠種子と非休眠種子があることが明らかになった。しかし、両者の比率は定量化されておらず、特に個体間で休眠と非休眠種子の生産比率が異なる可能性がある。もし、生産比率に個体差があり、かつ、それが年間で変動しないとすれば、非休眠種子の生産のしやすさは個体に特有の性質と考えられる。そこで、本研究では①休眠と非休眠種子の生産比率に個体差があるのか、②それは年間で変動するのかを調べた。

山形県鶴岡市を流れる赤川河川敷に分布する30個体を選定した。各個体から2008年の10月に種子を採取し、個体別に吸水実験を行った(各個体100粒×3反復)。実験期間は2週間で、期間中に吸水したものを非休眠種子、吸水しなかったものを休眠種子とし、個体ごとに非休眠種子の割合を算出した。さらに、翌年にも同じ個体から非休眠種子の割合を算出し、両年の非休眠種子の割合の相関関係を調べた。

どの個体も休眠種子と非休眠種子を生産していた。非休眠種子の割合は個体間で有意に異なり、最小6.3%~最大87.0%だった。また、個体の非休眠種子の割合は2008年と2009年で有意な正の相関があった(Sperman,p<0.01)。

以上のことから、ニセアカシアは種子異型性を示し、休眠種子を生産しやすい個体と、非休眠種子を生産しやすい個体があることが示唆された。非休眠種子は野外で直ちに発芽するので、分布を拡大する役割を持つと考えられる。したがって、非休眠種子を生産しやすい個体が主に生息域を拡大している可能性がある。一方、休眠種子を生産しやすい個体は、土壌中に多くの休眠種子を蓄積して既存群落の維持を確実なものにしていると推察される。


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