| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-125

モンゴル草原における埋土種集団の構造と植生回復への寄与

*小田祥三(鳥取大・農),衣笠利彦(鳥取大・農)

モンゴルでは道路の舗装化が進んでおらず、車両による未舗装道路(わだち掘れ)の形成によって草原の裸地化が起こり、黄砂や砂嵐の一因となっている。今後、舗装道路の整備とともに未舗装道路が放棄されると考えられるが、モンゴルのような乾燥地において放棄後の未舗装道路の植生回復がどの程度期待できるのかよくわかっていない。未舗装道路では多年草の根茎がほとんど残存しておらず、植生回復は埋土種子に依存すると考えられる。そこで本研究では、モンゴル草原における埋土種子集団の垂直構造を明らかにし、それに与える車両通行の影響を評価した。

草原と未舗装道路のわだち掘れにおいて、堆積砂、土壌深度0~5㎝、5~10㎝、10~15㎝、15~20㎝、20~30㎝に存在する種子数を計数した。採取した種子の大部分を占めるChenopodium属一年草について発芽試験を行った。

埋土種子数は深い層ほど少なかった。草原では埋土種子の90%以上が堆積砂中に存在し、土壌深度5㎝以下ではほとんど見られなかった。未舗装道路における堆積砂中の種子数は、草原よりも大幅に少なかった。しかし堆積砂よりも深い層では、埋土種子数はほとんど変わらないか未舗装道路の方が多かった。埋土種子はChenopodium属一年草がほとんどを占めており、地上部植生に多く見られたSalsola collinaなどの種子はほとんど見られなかった。採取した埋土種子の発芽率は非常に低かった。

以上から、モンゴル草原における埋土種子のほとんどが堆積砂中に含まれており、車両の通行によって大きく減少することが明らかになった。今後、テトラゾリウム塩染色による埋土種子の生死判別を行い、車両の通行が埋土種子集団に与える影響を、種子の量と質の両面から議論する。


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