| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-160

常緑・落葉樹の葉リター分解呼吸量と環境応答性の評価

*安宅未央子(京大院・農・森林水文), 小南裕志(森林総研), 上村真由子(日本大), 植松千代美(大阪市大), 谷誠・小杉緑子(京大院・農)

森林における生態系呼吸量の40~80%は、土壌から放出されるCO2である。土壌呼吸は、従属栄養呼吸と根呼吸によって構成されており、環境要因の変化に伴って、様々な時間スケールで変動する。とくに分解にともなってCO2を放出する従属栄養呼吸は多様な基質(落葉・落枝、枯死根、枯死木など)と様々な分解過程が混在しており、土壌呼吸の各構成要素の発生機構を理解することなしに生態系呼吸量を解明することはできない。なかでも落葉は、地下部に比べると周囲の環境変動による影響を受けやすく、温暖湿潤な環境下においては特に分解が早い。

従来の分解研究では、数ヶ月~数年単位の重量減少量から求められる分解率を指標に、植生や気候因子間での比較が行われてきた。一方、分解に伴って放出されるCO2を測定することで、より短期的な分解量と環境要因(温度・含水比)に対する応答性について調べることが可能となる。本研究では、樹種間での落葉分解呼吸量とその環境応答性の違いについて調べた。

観測は、大阪府交野市私市に位置する大阪市立大学付属植物園で行った。ここでは日本に存在する代表的な11種類の森林群落が形成されている。本研究では、暖帯型落葉樹林とシイ型・タブ型照葉樹林で分解呼吸量の測定を行った。測定サンプルとして、落葉ではコナラ、常緑ではスダジイ・マテバシイ・タブノキの落葉を選択し、2010年1月に林床面に設置した。観測は、2010年6月から2010年11月の期間で、赤外線ガスアナライザーと小型チャンバーを用いた密閉法にて落葉からのCO2放出量を測定した。

分解呼吸量と環境要因(温度・含水比)の関係は、樹種間で明らかな違いはなかった。一方、物理的な構造(葉厚)の違いにより、落葉樹に比べ常緑樹の落葉は、CO2放出期間が長い可能性が示唆された。


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