| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-164

安定炭素・放射性同位体を用いた針葉樹人工林設定後の土壌炭素蓄積に寄与する要因

*新井宏受(京大院 農), 徳地直子(京大 フィールド研)

造林により土壌有機炭素(SOC)量が変化することは知られているが、造林後の変化パターン・量には大きなばらつきが存在する。本研究では、安定炭素同位体(13C)・放射性同位体(137Csと210Pbexc)を用いて、造林後のSOC量・動態の変化を明らかにする事を目的とした。

調査は京大フィールド研和歌山研究林内に隣接して存在する天然生モミ・ツガ林と55年生スギ人工林で行った。スギ(C3植物)人工林では、人工林形成以前にモミ・ツガ林を伐採し、ススキ(C4植物)草地として維持されていた。

結果より、SOC stockは人工林で高い値を示した。55年間の積算C供給量には大きな差は見られなかったが、リターの質(C/N比)は大きく異なっていた。さらに、ススキ由来SOC量は、林分間でのSOC量の約36%であった。従って、スギ人工林でのSOC量が多くなった要因は、造林前から存在した古いSOCの継続的な保持、及び供給リターの質の変化に起因するスギ由来SOCの高い集積速度であった。一方で、放射性同位体の結果から、造林時の土壌攪乱の抑制・造林前後での土壌深層への輸送動態の変化が示唆された。

以上の結果より、本調査地スギ人工林では①造林時の土壌攪乱の制限による初期SOC量減少の抑制、②難分解性リターの供給による分解速度の抑制、によりSOCの蓄積が促進された事が推察された。


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