| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-168

水田におけるカエル幼生の個体群動態プロセス:状態空間モデルによる推定

*片山直樹(東大・農), 天野達也(農環研), 伊東圭祐, 武田智, 宮下直(東大・農)

野外における生物の時空間的不均質性には、内的及び外的要因が関わる。例えば、前者は内的密度依存性や捕食圧等の種間相互作用、後者は非生物的要因である。捕食圧は、短期的には捕食者の集合及び機能反応によって決まる。しかし、これらの要因の相対的影響を野外スケールで評価した研究は少なく、生物の時空間動態プロセスは未だ完全には解明されていない。

カエル幼生は、水田ごとに密度が異なり、また1枚の水田でも湛水期間中に密度が変化する。この時空間的異質性には、カエル幼生の内的密度依存性、サギの捕食圧そして湛水管理等の農業活動が影響している可能性がある。これらの要因はしばしば非線形に影響し、またカエル幼生の密度データには測定誤差が伴う。この問題に対処するには、状態空間モデルが有効である。

本研究は、水田におけるカエル幼生の個体群動態プロセスの解明を目的とした。2008~2010年の3時期(5月下旬、6月上旬及び下旬)に、茨城県霞ヶ浦南岸で48水田のカエル幼生密度を調べた。同期間中、週5~6日の頻度でチュウサギ密度を、週2日湛水状況を調べた。また、同水田でチュウサギの採食行動を観察した。その結果、カエル幼生密度と採食効率の関係(機能反応)はタイプ2曲線に従うことが分かった。そこで、以下のモデルをたてた。

Ni,t+1 = Ni,t * exp(a + n*Ni,t + p1*Pi,t / (1+p2*Ni,t) + w*Wi,t)

ここでNi,tは水田i、時期tのカエル幼生密度、Pi,tはチュウサギ密度、Wi,tは水位のデータを表す。小文字が推定するパラメータである。

解析の結果、年ごとに影響の大きさは異なるものの、内的密度依存性、チュウサギの捕食圧そして湛水管理ともにカエル幼生動態に影響することが示唆された。


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