| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-170

冬期に繁殖するアカガエル類2種の長期個体群動態 ー個体群動態に連動し変化する年齢構成と繁殖開始年齢ー

*庭野裕,中村有,若林恭史,竹澤真人,長谷川雅美(東邦大院・理・生物)

ニホンアカガエル(Rana japonica)とヤマアカガエル(Rana ornativentris)は房総丘陵で同所的に生息している無尾両棲類である。本調査地における繁殖期は1月下旬から4月初旬であり、両種の産卵ピーク日も重なっている。本研究ではアカガエル類の基礎的な生活史情報を詳細に解明するため、長期間のモニタリング調査を行い、個体数の増減に伴う年齢構成と繁殖開始年齢構成を明らかにした。

調査地は周辺環境を含め大きな土地利用の変化がみられない、房総半島中央部にある千葉県長生郡長柄町の谷津田(約1ha)とし、1991年から2010年の19年間、1月から4月の産卵期に、ニホンアカガエルとヤマアカガエルの卵塊数カウント、繁殖参加個体の年齢および繁殖開始年齢査定、個体数推定を行った。その結果、卵塊数はカウント方法が統一された2002年以降ではニホンアカガエルで最少228(2002年)最多1840(2005年)、ヤマアカガエルで最少466(2003年)最多2198(2007年)であり、それぞれ8.1倍、4.7倍となり、推定される個体数が大きく変動した。繁殖参加個体の性比を2002年と2005年、2010年で比較したところ、各年ともにニホンアカガエルでオス:メスが約2:1、ヤマアカガエルでは約1:1と変化が見られなかった。個体数の増減と繁殖参加個体の年齢構成の関係は、両種ともに個体数が減少している時には老齢個体の割合が増え、増加している時には若齢個体の割合が増えた。また、繁殖開始年齢も、増加している時のみヤマアカガエルのメスで1歳個体の繁殖参加が確認された。上記の結果より、両種アカガエル類において、個体群の齢構成が個体数の増加期と減少期で変化することが明らかになった。


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