| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-173

マイクロサテライト解析を用いたヒグマの北海道東部個体群の遺伝的構造

*伊藤哲治(日本大学・院・生物),釣賀一二三,間野勉(道総研・環科研センター),小平真佐夫,山中正実,葛西真輔(知床財団),増田隆一(北大院理),小林喬子(東京農工大・院・連合農),佐藤喜和(日大・生物資源・森林動物)

北海道のヒグマ(Ursus arctos)は、mtDNAの多型解析により、17種のハプロタイプ(HT)を有し、3つの系統 (道央:A,道東:B,道南:C)ごとに異所的に分布することが知られている。特にA、Bそれぞれの系統に属すメスは、北海道東部の阿寒白糠地域(AS)で分布境界を接しながら、異所的に分布していることが確認されている。しかし明確にHTごとの異所的分布が認められなかった地域もあった。そこで今回、より詳細な個体群の構造についての知見を得るために、北海道東部において得られた試料(1996-2008年:N=647)のマイクロサテライト(STR)17-19座位の解析情報を用いて、メスHTおよびメスの試料採取地点分布からあらかじめ個体群を設定し、遺伝的構造解析をおこなった。STRUCTURE解析では、mtDNA 系統と同様に、大きく系統Aおよび系統Bの分布に沿って明確に分けられたが、ASでは,両系統が混在する個体群に分けられた。各個体群間では、特に高い遺伝的分化は検出されなかったが、ASおよび大雪山麓(DM)が隣接する個体群では、遺伝的分化は低かった。アサイメントテストでは、DM北東からDM北およびAS北のオスの移動、AS内および知床半島(SP)東西南へのオスの移動が検出された。また,AS-DM間の遺伝的構造は似通っていることが示唆された。以上のことから、森林が連続的に分布している地域の個体群内での個体の移動により,遺伝的流動が確保されていることが考えられる。


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