| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-205

水田における動物プランクトンおよび底生動物群集動態

*小関右介(長野水試)

近年、身近な二次的自然である水田の生物多様性に注目が集まっており、水田生物群集について多くの研究が行われている。しかし、それらの研究の多くは、ある時間断面における群集構造を報告した記載研究、または制御条件下で農薬や農法などの単一要因の影響を調べた実験的研究であり、水田内・水田間の群集構造の変異とその原因を、さまざまな要因が同時に作用する通常の水田において明らかにする試みは少ない。そこで本研究は、水田の動物プランクトンおよび底生無脊椎動物群集の時空間的動態パターンを特定し、生物学的・非生物学的環境要因の影響を探ることを目的とした。古くから稲田養魚(フナ)が盛んな長野県佐久地域において、養魚田と無養魚田を含む12の水田を選び、6月から8月にかけて週1回の頻度で各生物群集の現存量および群集構造を調査した(計11回)。動物プランクトンおよび底生無脊椎動物群集は、ともに時間的・空間的に大きな変異を示した。とくに、動物プランクトンの現存量(対数密度)はフナの相対現存量の大きい水田で時間とともに大きく減少し、水田間の変異は時間とともに増加した。動物プランクトンの多様度(Simpson指数)の時間変化にも水田間で変異がみられ、現存量とは反対にフナ現存量の小さな水田で大きく減少した。この結果、現存量と多様度の時間変化は負に相関した。こうした群集の動態パターンについて、さらに他の生物学的(ドジョウ現存量、オタマジャクシ現存量、クロロフィルa量)および非生物学的要因(水温、溶存酸素量、懸濁物質量など)の影響も加味して詳しく検討する。本研究は、財団法人長野県科学振興会発明・研究費により助成を受けた。


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