| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-224

甲府盆地におけるニワウルシ群落の消長

*中馬美咲, 齊藤陽子, 井出雄二(東大院・農)

ニワウルシは、中国原産の樹木であり、繁殖力の高さから各地で分布が拡大しており、林床植物の減少を招くと懸念されている。本種の分布を許す要因の把握はその防止にが重要である。本研究では、ニワウルシ群落の消長と群落周辺の土地利用の変化との関係を検討した。また、群落の成立年代から経過年による種組成の変化を推定することで群落の将来を予測した。調査地は、甲府盆地の分布が集中している6km×5kmの地域に定めた。1960年代、1970年代、1990年代、2000年代の空中写真を用い、群落の分布場所や面積を判別した。判別された群落のうち現存するものは現地調査を行い、群落を代表する2~4か所に5m×5mの調査区を設け、群落の樹高1.3m以上の全樹木を対象に胸高直径と樹高を、高さ1.3m以下を対象に種ごとの被度と群度を測定した。周辺の土地利用の変化は、各年代の土地利用図や郷土誌等によって明らかにした。

判別された群落数は、1960年代7、1970年代11、1990年代27、2000年代85、現在86と増加した。しかし、1970年~1990年に5、1990年~2000年に4消滅した。土地利用は、1943年以降養蚕業の衰退とともに桑畑から放置地や果樹園に変化した。1980年代には中央自動車道や競技場の建設、1990年代まで行われた道路整備により大規模な変化があった。消滅群落や2000年代に急増した群落の多くは、1980年代以降に土地利用が大きく変化した場所に成立していた。群落のうち約89%は成立当初から面積が変化せず、周辺環境も大きく変化していなかった。以上から本種は人為が加わった光条件のよい場所に群落が成立しやすい一方、隣接環境への拡大は何らかの攪乱が生じない限り困難であると考えられた。また、群落の経過年と種組成の分化に明確な変化傾向はみられず、一旦成立した群落の構造が長期にわたって維持されると予測される。


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