| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-234

洪水攪乱によって形成された裸地における外来種ニワウルシの定着

*荒井裕二,鈴木千暁,米林 仲(立正大・地球環境)

ニワウルシ(シンジュ)はニガキ科の落葉高木で、中国原産の外来種である。侵略的外来種ハリエンジュ同様、河川敷において実生から成木まで見られることから、自然状態で分布を拡大していると考えられる。本研究では、ハリエンジュや洪水攪乱に依存する在来種との競争に注目し、洪水攪乱によって形成された裸地における木本種の実生の侵入と生残過程を調べた。

荒川中流域に位置する、埼玉県熊谷市荒川大麻生公園付近の、2007年9月の大規模な増水(最大水位5.65m)によって形成されたとみられる裸地を調査地とした。河道から直角方向に伸ばしたベルトトランセクト(10m×100m)には、2009年4月から2010年10月に、ニワウルシ、ハリエンジュ、ヌルデなど木本種5種の実生が出現した。全調査期間を通して、ニワウルシの実生は最も多く、河道から40~60m、比高が約2mの地点で生育密度が高かった。周囲の実生の年輪調査から、ニワウルシの実生は2007年の増水後に侵入したと考えられる。また、同じ裸地内の密度が最も多かった比高2mに対応する立地に、方形区(30m×20m)を設置し、2010年6月から12月に木本種の調査をした結果、全調査期間を通してニワウルシの実生が最も高い生育密度(0.22~0.30本/㎡)を示し、それに次ぐハリエンジュ(0.11~0.17本/㎡)に比べて2倍近く高密度であった。12月までの生残率はニワウルシが71.1%で最も高く、次いでハリエンジュが62.5%であった。ニワウルシの当年生実生が9月に5本出現したが、12月には消失していた。11月1日前後に発生した最大水位2.89mの増水による攪乱が原因と考えられる。この増水でも当年生以外の実生の多くは生き残り、密度も生残率も高かったことから、この場所はニワウルシ優占林となる可能性が示唆された。


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