| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-260

葉緑体DNA変異に基くDryobalanops属の系統地理学的研究

*岸本光樹, 原田光, 上谷浩一, 荒木智哉, 旗谷章子(愛媛大・農), Lucy Chong, Bibian Diway(BRC,Sarawak), Joseph Jawa Kendawang(Sarawak Planted Forest), John Sugaw, Eyen Khoo(FRC,Sabah)

西マレシア植物区の低地熱帯林に広く分布する Dryobalanops属を対象にマレー半島及びボルネオ島各地から全7種37集団432個体を採集し,葉緑体DNAの非コード領域の塩基配列をもとに各種の系統関係及び集団分化の程度を調べた.検出された変異をもとにハプロタイプネットワークを構築した結果,D. aromaticaD. beccariiはハプロタイプを共有していたが,それ以外は種固有のハプロタイプであった.また,D. aromaticaが祖先型にもっとも近いハプロタイプをもっていた.各種の集団分化の程度についてAMOVAによって解析したところ,D. beccarii,D. lanceolata及び D. oblongifoliaでは明確な地域間分化が見られた.D. beccariiは遺伝的に分化した3グループに分けられたが,地域内集団間の分化は小さかった.D. lanceolata及びD. oblongifoliaも同様に分化した2グループに分けられたが,分化のパターンは種間で異なっていた.一方,D. aromatica及びD. rappaでは明確な集団構造が見られず,集団間の分化は小さかった.これらの結果は,Dryobalanops属はそれぞれの種で異なる地理的構造を持っており,西マレシア植物区における種の分布拡大の歴史が一様ではないことを示している.


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