| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-298

北海道西部地域におけるPropylea属テントウ2種の住み分けと交雑

*須賀大夢, 片倉晴雄(北大院・理)

ヒメカメノコテントウPropylea japonicaとコカメノコテントウP. quatuordecimpunctataは共に旧北区に広く分布する近縁な肉食性テントウである。日本国内では中部以北で分布域が重なっており、ヒメカメが平地、コカメが山地に分布する傾向がある。両種は実験条件下では妊性を持つ雑種を形成し、我々の行った野外集団の形態観察と予備的な遺伝子解析の結果も交雑が起こっている可能性が高いことを示唆している。しかし、両種の分布域の置き換わりや交雑帯形成については詳しく調べられていない。本研究では北海道西部における両種の分布と交雑の状況の調査を行った。2007から2010年の間に74地点から計834個体を採集し、その全個体について形態的特徴を点数化した。また48地点から得た560個体について核DNAのITS2領域(547bp)とミトコンドリアDNAのCOI領域(700bp)の配列を決定した。これらのデータを用いて雑種解析を行った所、形態的、遺伝的に明確に区別されるヒメカメ,コカメと判定される個体と、両種の雑種と判定される個体が存在していた。調査域内ではヒメカメとコカメの分布は広い範囲で重複しており、標高による明瞭なすみ分けは認められなかった。しかし、生息環境に違いがあり、ヒメカメが人家や畑周辺の開けた場所で多く採集されたのに対して、コカメは林縁で優占していた。また、雑種と判定された個体の中にはコカメ型の核DNAとヒメカメ型のmtDNAを保持する個体が多数含まれていたが、その逆の組み合わせを持つ個体はほとんど見られなかったため、ヒメカメからコカメへの一方的な遺伝子の浸透が示唆された。


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