| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-330

全個体ジェノタイピングによる絶滅危惧植物ガシャモクの遺伝的多様性解析

*兼子伸吾 (京大・農), 西川恵子 (奈教大・生物), 横川昌史 (京大・農), 真鍋 徹 (北九州自・歴博), 浜端悦治 (滋賀県大・環境), Ariunsuren Purevee (MSUA), 井中卓生 (市丸小学校), 松井淳(奈教大・生物), 井鷺裕司 (京大・農)

ガシャモク Potamogeton dentatus Hagstr. は、ヒルムシロ科の沈水性の多年生植物で、絶滅危惧IA類に指定されている絶滅危惧植物である。利根川水系の霞ヶ浦(茨城県)、印旛沼、手賀沼(千葉県)、多々良沼(群馬県)、および琵琶湖内湖(滋賀県)などに生育記録があり、千葉県の湖沼などでは緑肥に利用されるほど多産していた。しかし、水質汚濁などにより、ほとんどの既知生育地では絶滅あるいは野生絶滅し、現在、北九州市におけるガシャモク生育池が野生状態での国内唯一の生育地と考えられている。そこで本研究では、最後に残された生育地において全個体ジェノタイピングに基づく遺伝的多様性の評価を行うことを目的とし、現存する野生個体、栽培個体や過去に採取された標本などについて遺伝解析を行った。

ガシャモクで開発したマイクロサテライトマーカーを用いて、ガシャモク生育池に生育する15個体、ガシャモク生育池の埋土種子からの再生個体、手賀沼周辺で採取された栽培個体や標本について遺伝子型を決定した。その結果、ガシャモク生育池に生育する15個体は同一の遺伝子型を示し、1クローンであることが明らかとなった。また、埋土種子に由来する個体は、現存するクローンとは異なる遺伝子型を示したものの、独自の対立遺伝子を持たないことから、現存するクローンの自殖に由来するものと考えられた。その一方で、手賀沼周辺で採取された標本や栽培個体は、野生集団からは検出されなかった多様な対立遺伝子が検出され、過去に手賀沼周辺に生育していた個体にはある程度の遺伝的多様性が存在したことが示された。


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