| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-338

多摩川支流三沢川におけるカワモズクの分布に農場建設に伴う環境変化が与えた影響

*野呂恵子,岡田久子,倉本 宣(明大・農)

多摩川支流三沢川は、多摩丘陵の北東部に位置する川崎市麻生区黒川上地区に源流部を有する。黒川上地区は周囲を都市に囲まれた農業振興地域であり、多様な生きものが生息できる環境を有する貴重な里山である。

明治大学は三沢川源流部に隣接する斜面に土地を取得し、2010年4月から農場を建設中である。2010年5月、農場の接道延長の確保のため三沢川の改修工事が行われた。三沢川には絶滅危惧種であるカワモズクが生育しており、工事によって本種の生育に悪影響が及ぶことが懸念された。演者らは、カワモズクの保全のため、「水を切らさない」、「有毒物を流さない」、「濁水を流さない」ように提案した。この提案に対し、施工者はさらに「水温を上げない」ことも考慮し、可能な限りカワモズクの保全に配慮した工事を行った。当初は別の用水路に水流を完全に迂回させる計画だったものを、工事箇所にコルゲート管を通し、河川の勾配を利用して水流を流下させる措置をとった。これによって工事区間の下流は通常に近い流量を保った。こうしてカワモズクは守られたはずであった。

しかしその後の造成工事の進捗につれ、2010年7月末頃から、三沢川では濁りや土砂の堆積もみられるようになり、これらの影響によってカワモズクが生育できなくなる可能性が考えられた。カワモズクは初冬から春季にかけて繁茂し、目視で確認しやすくなる。そこで本研究では、2010年12月から2011年2月にかけての三沢川における本種の分布状況を調査し、今後の保全につなげることを目的とした。

2011年1月現在、三沢川源流部では本種の生育を確認しており、順調な生長をみせている。しかし、昨年生育していた工事現場の下流においては、まだ生育が確認できていない。今後、カワモズクは出現し生育できるのか。分布域と河床の状態を比較して検討する。


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