| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-343

開設年数の異なる林道での植生へのエッジ効果の比較

*榎木勉(九州大農),五十嵐秀一(愛媛大院農),楠本聞太郎(九州大院生資),辻和希(琉球大農)

沖縄島北部の常緑広葉樹林に開設された林道による植生への影響を明らかにするために、開設年の異なる林道にベルトトランセクトを設置し、林冠高、立木密度、胸高断面積合計や下層植生の出現確率などの林縁からの距離による違いを比較した。

開設後3年未満、約10年、約20年が経過した林道にそれぞれ10本のベルトランセクトを林道から垂直に延びるように設置した。トランセクトの長さは20m、幅5mとした。森林構造を表す因子や種の出現確率を目的変数とし、開設後の経過年、林縁からの距離、各トランセクトを説明変数とするモデルを検討した。

開空率は林縁で大きくなるが、この増加は開設後3年未満のトランセクトで最も大きかった。林冠高は開設後3年未満では、林縁と林内との差がないが、開設後10年では林縁で低くなった。この減少は開設後20年では少し小さくなった。立木密度は開設後の年数が経過するほど林縁で増加した。胸高断面積合計は、開設後10年で増加し、20年で減少したが、明瞭なエッジ効果はみられなかった。最大胸高直径はいずれの経過年数でも林縁で小さかった。胸高直径の中央値は開設後3年以内と20年では林縁で増加し、10年では逆に林縁で減少した。

林冠構成木の種数の変化に明瞭な傾向は見られなかったが、下層植生の種構成は林縁からの距離により大きく変化した。特に草本植物は林縁部にのみ出現し、緑肥や飼料として導入された種などが含まれた。木本植物もリュウキュウマツ、ハゼノキなど先駆的な種は林縁部で多く見られたが、森林内ではあまり出現しなかった。林縁での下層植生の出現確率の増加は、開設後の時間が経過するほど小さくなった。

以上の森林構造と種組成の時間的な変化は、林道開設直後に生じる側方からの光や風の侵入に対し、林縁木の形態の変化及びそれに伴う環境の変化に対応していると考えられた。


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