| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P2-349

人為的環境に依存するアカガエルの集団構造:アカガエル2種の比較

*松島野枝, 高柳真世, 牧野能士, 河田雅圭(東北大・生命科学)

日本に生息するカエル類の多くは水田を生息環境としている。しかし、水田は人工的環境であり、水田地域およびその周辺の環境は人間の営みによって大きく変わり得る。このような環境変化は、水田に依存するカエル類の生息状況に大きく影響すると考えられている。しかし、日本産両生類において、生息地の面積や周辺環境の変化が、集団サイズや集団内の遺伝的多様性にどのような影響を与えるのかは十分に明らかにされていない。

本研究では、宮城県内の水田地域で普通に見られるカエルのうち、ニホンアカガエルとヤマアカガエルを対象として、多型のある複数の核遺伝子のDNA配列を調べることで集団構造を明らかにすることを目的とした。これら2種は、宮城県内に広く分布し、水田を産卵場所として利用している。2種は生息地がかなり重なっており、同じ場所に産卵することもあるが、ヤマアカガエルの方が山地寄りに生息している。そのため、おもに平地に生息するニホンアカガエルの方が、水田の消失や開発等の人間の活動の影響を受けやすいと予想される。

里山環境の残る水田地域や周辺を住宅に囲まれた地域、島嶼等を含む各種6集団からサンプリングを行った。このうちの4集団は両種ともほぼ同じ場所から採集した。各集団のDNA配列の多型を調べ、有効集団サイズや遺伝的交流の程度、遺伝的多型を比較した。

本研究で調べた核遺伝子は両種に対して同じものを用いた。このような方法は、種特異的になり過ぎるマイクロサテライトマーカーに比べ他の種でも同様に使える可能性があり、コアレセント理論を用いた解析に利用できるという利点がある。


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