| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-001

不均質に土壌栄養塩が分布する環境下で、栄養塩パッチの出現時期の違いが個体成長と根の反応に及ぼす影響

*松井萌恵,可知直毅,鈴木準一郎(首都大・理工・生命)

野外で、土壌栄養塩パッチの存続期間は数日〜数十日であり、その空間分布は変化する。栄養塩パッチが植物に及ぼす影響はパッチ出現時の植物の成長段階や供給される栄養塩量により異なると推測される。そこで、パッチの出現時期と栄養塩総量の組み合わせが個体成長と根の反応に及ぼす影響についてソライロアサガオ(Ipomoea tricolor)を用いた栽培実験により評価した。

パッチの出現時期、栄養塩総量、栄養塩分布パターンを3要因とし、13反復を設定した。ビニールハウスで66日間の栽培後、地上部と地下部に分けて刈り取り、乾燥重量を測定した。パッチ出現時期を3水準(0日目,22日目,44日目)、栄養塩総量を3水準(低,中,高)設定した。1個体のアサガオの実生を6号鉢に定植後、全ての処理で3回(22日目,44日目,66日目)の刈り取りを行った。あらかじめ鉢内に、円柱状の筒を中心から約3cmの距離に埋設した。異なる3時期に、筒を抜いた後に固形肥料を混ぜた土壌を入れ、パッチの出現とした。パッチ内の栄養塩濃度がパッチ外より高いヘテロ条件と、パッチ内外の栄養塩濃度が等しいホモ条件を設定し、ヘテロ・ホモ条件間での収量と地下部配置の差異を処理間で比較した。

低栄養塩のとき、ヘテロパッチに対する地下部の選択配置が生じた。また、パッチを初期に出現させた処理は、パッチを中・後期に出現させた処理より最終収量が大きい傾向が見られた。一方、高栄養塩のとき、ヘテロパッチに対する選択配置は生じなかった。また、パッチを初期に出現させた処理は、パッチを中・後期に出現させた処理より、生育期間を通して収量が小さかった。以上より、パッチに対する地下部の選択配置は、貧栄養条件下で強まると考えられる。また、供給される栄養塩総量は同じでも、パッチの出現時期により植物への影響が変化する事が示唆された。


日本生態学会