| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-030

ニホンジカによるスギ・ヒノキ剥皮害と広葉樹低木の食害

福本浩士(三重県林業研究所)

ニホンジカによるスギ・ヒノキ剥皮害と広葉樹低木の食害

福本浩士(三重県林業研究所)

三重県内のスギ・ヒノキ人工林におけるニホンジカ(以下、シカ)による造林木剥皮害および広葉樹低木(樹高50cm以上)の食害の実態を調査した。県内6地域20林分に固定調査地を設置して植生調査を行うとともに、糞粒法および糞塊法によるシカ密度の推定を行った。スギは4地域9林分について調査を行い、当年の剥皮害の本数発生率は0~8.9%であり、25、26および 72年生の林分で剥皮害が発生した。一方ヒノキは6地域15林分について調査を行い、当年の剥皮害の本数発生率は0~26.0%で、21~45年生の林分で剥皮害が発生した。シカ密度と当年の剥皮害の本数発生率には明瞭な関係は認められず、同一地域においても林分間で発生率に違いがあった。

人工林内に生育する広葉樹についてその種構成をみてみると、調査地域間の違いはあるが、ヒサカキ、ヤブツバキ、アラカシ、シイなどシカの採食に対して耐性のある種やアセビ、シキミ、イズセンリョウなど嗜好性の低い種が優占種となる傾向があった。シカの採食により人工林内の広葉樹の種構成が単純化している可能性が考えられた。また多様度を検討したところ、多様度指数は0.11~0.88(SimpsonのD)、0.40~3.38(Shannon-WienerのH’)、均衡度指数は0.20~0.97(PielouのJ’)であった。人工林内に生育する広葉樹の多様度は、林齢が大きいほど高い傾向があった。


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