| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-041

大型の果実食鳥類サイチョウ類による種子散布距離の推定

*北村俊平(人と自然の博物館), Pilai POONSWAD(マヒドン大学・理)

旧熱帯地域に生息する大型の果実食鳥類であるサイチョウ類は、数十種から100種を超える果実を利用し、それらの種子を散布する。サイチョウ類は広い行動圏を持つことから、種子の長距離散布者として働く可能性が高い。

タイ王国カオヤイ国立公園において1988年から1994年にかけて4羽のオオサイチョウBuceros bicornis、2羽のシワコブサイチョウRhyticeros undulatusを対象としたラジオテレメトリー法による行動圏の推定データ(Poonswad & Tsuji 1994, Tsuji et al. 1996)を再解析し、1時間あたりの移動距離からサイチョウ類による潜在的な種子散布距離の推定を試みた。移動距離の推定に用いた位置情報は平均141地点(25-254地点)で、1時間後の平均移動距離は0.8km(0.5-1.1km)だった。平均移動距離が1kmを超えた割合は24%(11.4-42.2%)で、3kmを越える移動も4個体でのべ26例確認された(2.4-34.7km)。

種子の体内滞留時間の測定には、バンコク市内のドウシット動物園内で飼育されているサイチョウ類(4羽のオオサイチョウ、1羽のツノサイチョウBuceros rhinoceros、1羽のビルマサイチョウAnorrhinus austeni)を利用した。2010年9月下旬に毎朝8時に各個体に皮を剥いたリュウガン果実をDimocarpus longanを7個与え、それらの種子が吐き戻されるまでの時間を測定した。リュウガン種子(種子重)はすべて1個ずつ吐き戻され、糞として排出されたものはなかった。体内滞留時間の中央値は62分(最小:23分、最大:209分、N=118)で、1時間以内に吐き戻された種子は47%、2時間以内は87%で、3時間を超えた種子も4例確認された。


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