| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-042

果実食鳥の採食戦略とその利用果実多様性との関係を探る:ボランティアデータを利用した解析

*吉川徹朗, 井鷺裕司(京大院・農)

一般に、液果と果実食鳥類との相互作用は、多種対多種の拡散した関係をしめす。この種間相互作用ネットワークの構造を理解するうえで、液果に対する果実食鳥の採食幅はキーとなる要因であるが、これを評価した研究はわずかである。また、果実食鳥は液果に対してさまざまな採食戦略をもち、これはその鳥が散布者として働くかを左右するが、採食戦略と採食幅との関連は明らかでない。本研究では、日本の果実利用鳥類における液果に対する採食幅を評価するとともに、採食幅と採食戦略タイプ(4タイプ; のみこみ型・すりつぶし型・つぶし型・つつき型)との関連を探った。分析には、日本野鳥の会神奈川県支部によって25年以上にわたり収集された観察データを用い、ここから抽出した果実食記録(約1700件)により鳥類23種の液果に対する採食幅を評価した。まず、鳥種間での観察努力量の違いをコントロールするためにrarefaction法、および多様性指数Menhinick’s indexにより採食幅を評価した。つぎに、それぞれの鳥における、季節性による利用可能果実の違いをコントロールするために、それぞれの鳥の採食幅が同一と仮定する帰無モデルから得られた採食幅と、実際の採食幅を対比することで評価した。

分析の結果、鳥類23種間で採食幅に大きな変異が見られた。この変異は、それぞれの鳥での観察努力量および利用可能果実のちがいをコントロールしたのちにも認められた。種子をつぶして食べる「つぶし型」では採食幅は狭いのに対して、種子をつついて食べる「つつき型」では広かった。一方、果実を丸呑みし種子散布する「のみこみ型」では、種間で採食幅に大きな変異があった。以上の結果は、鳥類の採食戦略が採食幅に影響し、液果−果実食鳥間の相互作用ネットワークをかたちづくるうえで重要な要因であることを示している。また同時に、鳥類の採食幅を規定している未知の要因が存在することも示唆している。


日本生態学会